
「SAUNA ALKU」の野口翔平代表
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【SAUNANCHU~ととのいの裏方たち~】愛媛の街で、サウナ文化の夜明けを迎えようとしている。その兆しを生み出したのが、松山市の「SAUNA ALKU(サウナアルク)」だ。“ALKU”とはフィンランド語で“始まり”の意味。料理、建築、そして独立と歩んできた野口翔平代表(33)がつくった空間は、働く人の心をそっと整える“入り口”になっている。
高校を卒業してからは決断の連続だった。寿司と和食の店に就職し、料理の基礎を身につける。一通りの仕事を覚え、新しい景色を求めて建築の世界へ。営業として人と向き合い「人と関わることが自分にとっての天職だった」とその奥深さに魅了されていった。7年の実務経験を経て、建築士の資格を取得。節目ごとに出会った人々に導かれ、経験を積みながら昨年、独立を果たした。独立後に描いたのは“癒しをデザインする”新しい空間づくり。その答えが「SAUNA ALKU」だった。
設計の仕事は深夜まで続くことも多かった。「人とも喋るし、パソコンも触る。自律神経が乱れやすかった」。多忙な日々の中で、サウナに惹かれていくのは自然の流れだった。出張に絡めて全国の有名施設を巡り歩き、体験を重ねるうちに熱は高まっていく。「業務パフォーマンスが上がり、ストレスを自己完結できるようになった。この感覚を松山に持って帰りたい」。気づけば、頭の中はサウナのことで満たされていた。
2024年7月、自ら設計デザインを手がけた「SAUNA ALKU」がオープンした。「僕にとっては“始まり”の場所。愛媛でサウナ文化をつくる始まりであり、まだサウナを知らない人の第一歩になってほしい」。施設は落ち着いた色調で統一し、心からリラックスできる空間を整えた。居心地を守るためのルールづくりにも妥協はない。「会話OKのサウナ室以外はお静かに」「水風呂に入る前にしっかり汗を流す」。当たり前のことを一人ひとりが守ることで、愛のある空間が保たれている。
サウナ室は二つ。ひとつは、会話OKの低温多湿サウナ。“裸の付き合い”から生まれる対話という、本場フィンランドの文化を取り入れた。もうひとつは、「和」をコンセプトにした黙浴スタイルの高温多湿サウナ。落ち着いた照明のもと、静かに自分と向き合い、心と身体をリセットする。内気浴スペースには、10脚のアディロンダックチェアと、フルフラットでととのえる畳の間を設けた。やわらかな灯りに照らされながら大の字になれば、疲れも、時間も静かに溶けていく。
サウナ文化を愛媛に根づかせる活動にも力を注ぐ。昨年末には、イベントやグッズ制作を企画するコミュニティ「SAUNiiiK(サウニーク)」を立ち上げた。「いろんな切り口で発信していく。愛媛の人がサウナを日常に取り込めるように、どんどん広めていきたい」と力を込める。創業70年の老舗「小泉製菓」とコラボし、サウナ後に食べたくなる“サ菓子”「大判焼カフェオレあん」を開発。地域企業との連携から、“日常に溶け込むサウナ文化”の輪が少しずつ広がっている。サウナといえば愛媛──。そんな日を目指して、今日も“きっかけ”の種を蒔いている。
◇野口 翔平(のぐち・しょうへい)1992年(平4)7月31日生まれ、愛媛県松山市出身の33歳。小学時代から高校卒業まで野球に熱中。独立後は施設経営と並行し、住宅やオフィスなどの設計デザインを手がける。近年は温浴施設からサウナ設計の依頼も増えている。好きなサウナは高知県「SAUNA グリンピア」、愛知県「KIWAMI SAUNA」。趣味は釣り。
【SAUNA ALKU】
・住所:愛媛県松山市一番町1丁目11番6 チャイクロビル 2階
・営業時間
平日 16・00~24・00(月曜日は22・00まで)
土日祝 10・00~24・00
※予約優先制
