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虫垂は大腸に付属している小さな器官であり、腹部右側に位置している。若い世代で虫垂がんが増えているという米国の研究が発表された。(Photograph by Vladimir Vladimirov, Getty Images)
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手術で切除する必要に迫られない限り、自分の虫垂(大腸から伸びる小さな付属器官であり、腹部右下側にある)について考える人はほとんどいないだろう。しかし、そうした常識が書き換えられるかもしれない。
2025年6月10日付けで医学誌「Annals of Internal Medicine」に掲載された論文によると、米国の若い世代の間で虫垂がんが増えている。1941~49年生まれの人たちと比べて、虫垂がんの発症率は1976~84年生まれで3.41倍、1981~89年生まれで4.62倍に増加しているという。
この研究では、米国立がん研究所が運営する大規模データベース「SEERプログラム」が用いられた。このデータベースには、米国各地にあるさまざまながん登録機関から集められたデータが含まれている。今回は、1975~2019年の間に20歳以上で虫垂がんと診断された4800人以上のデータが使われた。
研究者らは、5年刻みで21個の互いに重複する「出生コホート」(特定の9年間に生まれた人々のグループ)を作った。最初のグループは1891~99年に生まれた人々、最後のグループは1991~99年に生まれた人々だ。(参考記事:「若い世代で大腸がんが増加、見逃してはいけない兆候とは、研究」)
ただし、全体として見れば、虫垂がんはまれな疾患である点には注意が必要だ(編注:日本では、2002年3月~2014年9月に虫垂切除手術を受けた752人の検体のうち、過去の報告より高い割合である2.3%に虫垂がんまたはその可能性のある腫瘍が見つかり(ただし大半は60歳以上)、発生率の増加が示唆されるとする論文が発表されている)。
「新たに虫垂がんと診断される人は、(米国では)年間3000人ほどと推測されます」と、同論文の著者である米バンダービルト大学医療センター医学部の助教アンドレアナ・ホロワティ氏は述べている。一方で、米国で最も多いがんである乳がんの新たな症例は、2025年には約32万件に達する見込みだという。
ひとつだけはっきりしているのは、「虫垂がんについてわかっていることは、まだごくわずかに過ぎないということです」と、ホロワティ氏は言う。「今われわれは、リスク要因の解明に着手したばかりです。なぜこの病気が増えているのかを理解するには、現在見られる増加傾向を手がかりにすることが重要なのです」
なぜ若い世代に増えているのか
虫垂がんは、虫垂の細胞に変異が起こり、制御不能に増殖して腫瘍を形成することで発生する。虫垂のみにとどまっている場合は、ほかの臓器に転移している場合よりも治療しやすいと、米フォックスチェイスがんセンターの助教で消化器がんを専門とするクリストファー・G・キャン氏は言う。(参考記事:「自覚しづらい「遺伝する高コレステロール」、9割超が未診断とも」)
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