米との首脳会談、日本が投資候補を複数提示へ 防衛費増額の方針伝達=関係者

 今月28日にも開く高市早苗新首相(写真中央)とトランプ米大統領の首脳会談で、日本側が対米投融資の案件候補を複数提示するほか、大豆や液化天然ガス(LNG)、フォード車など米国産品の購入を伝える方向で調整していることが分かった。都内で21日撮影(2025年 ロイター/PHILIP FONG)

[東京 22日 ロイター] – 今月28日にも開く高市早苗新首相とトランプ米大統領の首脳会談で、日本側が対米投融資の案件候補を複数提示するほか、大豆や液化天然ガス(LNG)、フォード車など米国産品の購入を伝える方向で調整していることが分かった。複数の関係者が明らかにした。防衛費の増額方針を示すことも検討している。

高市氏は自民党総裁選の期間中、石破茂前政権が結んだ関税や投融資に関する日米合意について日本の国益に合わない場合は日米協議の中で「しっかり言及するべきだ」と発言したことがあった。今回のトランプ氏との会談で合意内容を引き継ぐことを明確にした上で、新政権として対米重視の姿勢をアピールする。高市氏は21日の会見で、「率直な意見交換を通じて首脳同士の信頼関係をまず深めていきたい」と話した。

関係者3人によると、日米が9月に関税協議の中で合意した5500億ドル(約83兆円)の投融資について、日本側は複数の案件を「候補」として提示する。関係者の1人は「経済産業省を中心に米国への投資案件を精査している。有力候補となりそうな案件が複数あるので米側に提示したい」と述べた。

日米は9月、自動車など日本の輸出品に対する関税を15%へ引き下げる一方、日本が米国に対して5500億ドルの投融資を実行することで合意した。投融資は日本側の債権が完済されるまでは米側と現金収入を折半し、その後は日米が1対9の割合で配分するなどのスキームだ。

政府内には当初「果たして手を挙げてくれる民間企業があるのか」と案じる声もあったが、現在までに複数の案件が候補に挙がっているという。関係者の1人は「日米1対9の利益配分だとしても、低リスクで実行できるのであればビジネスとしては成り立つとの声がある」と話す。首脳会談で投融資に関する新たな文書の作成は現時点で検討されていないという。

投融資案件は9月の覚書に基づき、半導体、医薬品に加え、金属、重要鉱物、造船、エネルギー、人工知能(AI)・量子コンピューティングなど9分野から選定される見通しだ。政府は特に民間企業だけでは進めづらいエネルギー関連事業などを候補として想定する。日米両国の実務者で構成する「協議委員会」が内容を精査し、最終的にはトランプ氏が選定することになる。

日本側は米国の工業製品やエネルギー、農産物を購入することも伝える。米自動車大手フォード・モーター(F.N), opens new tabのピックアップトラック「Fー150」の購入を表明する方向で調整している。主に除雪車としての使用を想定している。米国で安全基準を満たした自動車の輸入を円滑化する政策についても政府の取り組み状況を説明する。

農産物は大豆などを追加購入する。大豆は中国が米国産の輸入差し止め措置を講じたことで、米国にとって販路拡大が喫緊の課題となっていた。米国のラトニック商務長官が今月10日、赤沢亮正経済再生相(当時)との電話会談で追加購入を求めていた。エネルギーはLNGについて、「年間計70億ドル規模の安定的かつ長期的な追加購入を実施」とした9月の合意文書に沿って購入する。米国産のコメも追加購入が進んでいることを確認する方針だ。

関係者の1人は「今回の首脳会談のメインテーマは『投資、コメ、自動車』だ。それらの分野でトランプ氏に日本の姿勢をアピールしたい」と話す。

日本の外務省はロイターの取材にコメントを控えた。米ホワイトハウスにもコメントを求めたが、現時点で回答を得られていない。

首脳会談は防衛費も主要な議題になる公算が大きい。前出と別の関係者によると、日本側は2022年に閣議決定した安全保障関連3文書を前倒しで改訂する方針をトランプ氏に伝える。日本の安全保障環境などを盛り込んだ同文書は、防衛費を国内総生産(GDP)比2%へ引き上げる根拠となっており、同関係者は「防衛費の更なる増額に道を開く意味がある」と説明する。

関係者の1人によると、防衛費の具体的な目標額や時期は示さず、必要な防衛力を積み上げて行くことを表明する考えだという。茂木敏充外相は22日の会見で、安保3文書の見直しを検討課題としていることなどを米側に伝える考えを示した。その上で「金額や対GDP比ありきではなく、大事なのは防衛力の中身。そこの中で積み上げていくものだ」と述べた。

トランプ大統領は今月下旬にアジアを歴訪する。東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議が開かれるマレーシアを訪問後、27日から訪日する方向で調整している。その後、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議が開催される韓国へ向かう予定だ。

(鬼原民幸 取材協力:Tim Kelly 編集:久保信博)

私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」, opens new tab

鬼原民幸

2025年6月からロイターで記者をしています。それまでは朝日新聞で20年間、主に政治取材をしてきました。現在、マクロ経済の観点から日々の事象を読み解く「マクロスコープ」の取材チームに参加中。深い視点で読者のみなさまに有益な情報をお届けしながら、もちろんスクープも積極的に報じていきます。お互いをリスペクトするロイターの雰囲気が好き。趣味は子どもたち(男女の双子)と遊ぶことです。