かつて伝統的な町家や茶屋が多く立ち並んでいた京都市中京区。低く抑えた軒が通りに面して連続する京町家のたたずまいは、建て替えが進んだいま、ほとんど見られなくなりました。
THE HIRAMATSU 京都は、そのような立地にあり、伝統的な京町家を保存・再生して2020年に誕生したホテルです。「はんなり」という言葉に象徴される、京の町で培われてきた美意識と空気感の継承を計画の中心に据え、京町家の平面構成を踏襲し、町家建築の光と風、緑の演出要素を最大限に引き出しました。また、仕上げには木材や土壁、和紙など、京都らしい素材を多用し、昔ながらの人の手技の力を頼りに空間をつくりあげていきました。
京都ならではの美しい空間性と生活様式を追体験できる現代の施設として再構築した、その設計手法をご紹介します。

かつて京の都の中心であった室町通りに面する東側外観。明治32年(1899年)に建てられた表家(※1)と高塀はそのまま保存・活用した(撮影:フォワードストローク)
※1 表家
京都の町屋では、道路に面した部分に「表家」と呼ばれる建物を、その奥に居住用の建物を別々の棟として建て、両棟の間を中庭で隔てて細い玄関棟でつなぐ形式が多く見られた
