[東京 29日 ロイター] – ソニーグループ(6758.T), opens new tabの子会社で金融事業を担うソニーフィナンシャルグループ(ソニーFG)(8729.T), opens new tabは29日、東証プライム市場に上場し、初値は最初の板中心値段150円を上回る205円となった。時価総額は約1.46兆円。スピンオフ元の企業が保有する子会社株式の一部を自社株主に分配する「パーシャルスピンオフ」の手法を用いて直接上場した第一号案件として、その値動きに市場の関心が寄せられている。
ソニーG株の29日の基準値は、26日の終値から配当落ち分とソニーFGの最初の板中心値段を差し引いて設定されており、市場では「ソニーFGの株価が150円を上回るか下回るかが、今回の上場を評価する上でひとつの注目点になる」(松井証券の窪田朋一郎シニアマーケットアナリスト)との声が聞かれる。最初の板中心値段は、幹事証券会社が東証に提出した「流通参考値段」を参照して決まった。
パーシャルスピンオフの最初の板中心値段は、一般的な新規株式公開(IPO)の「公開価格」とは性格が異なるともみられている。ソニーGは、最初の板中心値段について、初値決定前の気配運用の基準となる値段を指し、ソニーFG株の実際の取引値段や株式価値を示唆するものではないと説明している。
市場の目線は定まりにくく「(市場が)適正価格を見出すのには時間がかかるのではないか」(岩井コスモ証券の有沢正一投資調査部部長)との声がある。
ソニーFGは、ソニー生命保険とソニー損害保険、ソニー銀行を子会社とする金融持株会社。2026年度までの3カ年の中期経営計画では、修正純利益(国際会計基準)を24年度の615億円から1250億円に引き上げる目標を掲げる。ソニー生命の利益成長を軸とし、30年度の既存事業全体での修正純利益は1700億円以上を目指すなどとしている。市場では「生命保険の安定感はあるが、銀行ビジネスではネットバンクの勢いが一時期ほどではなくなってきている」(松井の窪田氏)との見方が聞かれる。
一方、ソニーGによると、スピンオフの狙いは、資本効率を重視するエンターテインメントや半導体と、資本を積み上げて拡大する金融事業の性質の異なるバランスシートを分離し、投資家にそれぞれの成長戦略を明確に示すことにある。
一般的にスピンオフは、複数事業を抱えるコングロマリットにかかる「ディスカウント(企業価値の割引評価)」を解消し、事業ごとの評価を高める効果があるとされる。エンターテインメントを軸に成長を目指すソニーの場合も、非金融と金融を切り離すことで資本市場に対する説明力を高め、株主価値向上につなげる狙いがある。
需給面の影響にも関心が寄せられている。ソニーFG株は30日以降、日経平均の算出対象から外れるため、指数に連動した運用をする投資家からの売りが大引けにかけて見込まれている。一方、ソニーFGは29日から来年8月8日までを取得期間として総額1000億円の自社株取得枠を設定しており、需給影響を緩和する方針を示している。市場では「需給の影響は自社株買いで吸収可能だろう」(岩井コスモの有沢氏)との声がある。
「パーシャルスピンオフ」上場では、スピンオフ元の企業は実質的に非課税で子会社を分離できる。ソニーGは、保有するソニーFG株の8割超をソニーGの株主に分配し、公募・売り出しはない。「パーシャルスピンオフ」の制度は、23年度の税制改正で設けられた。
平田紀之、浦中美穂
私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」, opens new tab
