(CNN) 宇宙のかなたから届くわずか数ミリ秒の強力な電波パルス「高速電波バースト(FRB)」を観測する研究チームが、これまでで最も明るいFRBを検出した。なぞに包まれたこの現象を解明する手がかりになるかもしれない。
FRBは2007年に初めて観測されたが、発生源は今もなぞのままだ。
「FRB20250316」は3月16日、カナダ西部ブリティッシュコロンビア州のドミニオン電波天文台でFRBの観測を続ける「カナダ水素強度マッピング実験(CHIME)」の電波望遠鏡と、新たな小型望遠鏡のネットワーク「アウトリガー」によって検出された。「史上最も明るい電波フラッシュ」を意味する「RBFLOAT」という愛称がつけられ、発生源は地球から約1億3000万光年離れた銀河「NGC4141」にあると特定された。
さらに米ハーバード・スミソニアン天体物理センター(CfA)の研究員、ピーター・ブランチャード氏らが、米航空宇宙局(NASA)のジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡を使ってRBFLOATの発生源を調べたところ、すぐ近くでかすかな赤外線の放射源が検出された。
両チームの研究結果はこのほど、天体物理学の専門誌「アストロフィジカルジャーナル・レターズ」(ApJL)の最新号に掲載された。
絶妙なタイミング
CHIMEはこの7年間で数千回のFRBを検出してきた。アウトリガーの小型望遠鏡はFRBの位置をより正確に特定するため、ブリティッシュコロンビア州と米ウェストバージニア、カリフォルニア両州で今年初めから稼働している。それからわずか約2カ月での快挙だった。
RBFLOATでは1秒にも満たない瞬間に、太陽が4日間で出すのと同等のエネルギーが放出された。
アウトリガーの望遠鏡による三角測量で、発生源はひとつの星団よりさらに小さい、幅45光年ほどの領域に絞られた。研究チームを率いるカナダ・マギル大学の博士研究員、アマンダ・クック氏によると、これは約100キロ離れた場所から1個の硬貨を見つけるようなものだ。
チームのメンバーによれば、今までは電話の相手がどこの市や州にいるのか分からずに話をしているような状態だった。「それが今では、相手の正確な住所だけでなく、家の中のどの部屋にいるかまで分かるようになった」という。
「銀河の腕」に絞り込む
米アリゾナ州のMMT望遠鏡とハワイ州のケック望遠鏡の分光装置を使った補足の観測で、RBFLOATは銀河の中心に巻き付く「渦巻腕」で発生したことが分かった。腕の部分には新たな星が誕生する「星形成領域」が数多くみられるが、RBFLOATの発生源はその領域の中ではなく、すぐ外側にあった。

銀河「NGC4141」の隣にあるRBFLOATを捉えたMMT望遠鏡の画像/Yuxin”Vic”Dong/MMT
これまでに観測されたFRBの一部は中性子星の一種「マグネター」から発生したとみられ、FRBのマグネター起源説が有力視されてきた。マグネターは巨大な星が死を迎え、超新星爆発を迎えた後で中心に残る、超高密度で強力な磁場を持つ残骸。若いマグネターは星形成領域に分布している。
研究チームのメンバーによれば、RBFFLOATの発生源が星形成領域の外だったということは、起源のマグネターが出身の領域から追い出されたか、あるいはもともと領域外で誕生していた可能性を示している。
ジェームズ・ウェッブ望遠鏡で見えたもの
ブランチャード氏らのチームがジェイムズ・ウェッブ望遠鏡で観測したのは、「NIR―1」という天体だ。太陽のような恒星が進化し、明るさを増した「赤色巨星」かもしれない。これ自体がFRBの発生源になるとは考えられないが、近くに中性子星があってこの星の物質を引き寄せているとしたら、そこからFRBが発生することは十分考えられると、同氏は語る。
あるいは、RBFLOATがマグネターのような天体で発生し、その同じ天体で起きたフレア(爆発現象)の反射をジェームズ・ウェッブ望遠鏡がとらえた可能性もある。
ブランチャード氏は、RBFLOATが赤色巨星と中性子星の組み合わせか、そうでなければ単独のマグネターに由来することが示唆されたとの見方を示した。
反復か、単発か
FRBは同じ位置で数カ月のうちに繰り返し発生することが多いが、 RBFLOATは最初の観測から何百時間経っても繰り返されなかった。
CHIMEチームのメンバーによると、単発のFRBの位置や周囲の状況がこれほどの精度で判明した例は初めて。

ジェイムズ・ウェッブ望遠鏡で観測した銀河「NGC4141」と「NIR―1」と呼ばれる天体/NASA/ESA/CSA/CfA/Credit: NASA/ESA/CSA/CfA/P. Blan
FRBが発生する仕組みについては、これまでの反復例から、大きな天体同士の激突といった説は除外されてきた。1回のバーストで発生源自体が破壊され、繰り返されることはないと考えられるからだ。
だがRBFLOATが今後も繰り返されなかった場合、こうした説が当てはまる可能性も出てきた。ブランチャード氏によると、さらに観測を続けることで、FRBには複数の発生原因があることが示されるかもしれない。
CHIMEとアウトリガーによる今後の観測では、年間数百回に及ぶFRBの位置が特定される見通し。RBFLOATが将来繰り返されるのかどうか、あるいはほかにも同じような単発の例が検出されるかどうかが注目される。
